『僕とカン・ジェギュ監督の間』

昨日USCへKOREAN FILM FESTIVALということで、韓国映画「シュリ」と「ブラザーフッド」を見に行きました。なんでもその韓国でもトップクラスの監督、カン・ジェギュが来ると言うのでもう絶対行って何か話したいと思ってました。

このイベントに誘ってくれたShunさんの言葉を引用させて頂くと、
この監督は、「シュリ」で当時の韓国映画興行収入記録を塗り替え、さらに「ブラザーフッド」でその記録すら塗り替えたという韓国版スピルバーグのような偉大な監督なのです。

僕は人生には、いつもその瞬間瞬間にチョイスがあると思うのです。

監督とのQ & Aがあった今回も大きく分けて、僕には2つのチョイスがありました。僕のスイッチをONかOFFかどちらを押すかということで考えてみよう。

1つは、OFF。
質問せず、ただこのまま他の人たちが質問し続け、僕は監督の回答に耳をかたむけること。

もう1つは、ON。
無理矢理質問を作ってでも質問をして、監督と少しでも接点を持つ様にトライしてみること。

沢山のお客も来ていてプレッシャーがかかるので、僕は一瞬前者のOFFをとろうとしましたが、いや、ここは絶対後者ONを選ぶべきだと思い、質問はまだ考えていなかったけれどとりあえず、質問者の列に並ぶ事にしました。

僕の前には、8名程いて次々に色んな質問をしていくので、俺の質問が直前で聞かれたらどうしよう!席に戻るのもあれだしなぁと思ったので、並びながら必死にいくつも質問のパターンを考えてました。

僕が実際に聞いた質問は、
1、映画を制作するのは本当に大変なことだけど、何があなたをそこまで突き動かし続けるのか。何があなたのモチベーションとなり動き続けるのか。

2、映画はあなたにとって何なのか。
観客を楽しませるエンターテイメントであるのか、それともメッセージを伝えるツールであるのか。

回答は、簡単に言うと、
1は、私は物事を変化させることが好きだと言っていました。
それはどういう事かと言うと、例えば、何かに対するステレオタイプ、韓国の映画産業、人々の感情など、自分が映画を作る事によって、何か良い方向に変化を生み出していくことが、最大の喜びで、辛くても次のプロジェクトにまた動き始められるのだどうです。

2は、映画はメッセージを伝えるために作りたいと言っていました。
2本目に見たブラザーフッドでは、なぜ人々は敵や戦争を作り出すのか、なぜののしり合い、戦い、殺し合うのか。
宗教、国籍、性別など色々あるけど、人間はみんな同じく人間じゃないかと。

ということでした。
確かにものすごく強烈な映画になっていました。

そして、先ほどのチョイスというところに話を戻すけれど、『僕が質問をするということ』、即ち、ONを選んだ事によって、少なからず、でも確実に僕がその会場の流れ、起こったことを変えているのです。

では実際には起こらなかった方として、もし『僕が質問をしなかったら』、、とOFFでシミュレーションしてみると、
そのまま時は流れていたはずで、細かく言えば、僕が質問したことに関する監督の言葉はその場に発されなかったはずで、そこにいた観客も、何故、カン・ジェギュが映画を作り続けるのかなど、それを耳にすることはなかったはずである。
もっと言えば、Shunさんが僕をUSCという会場に誘ってくれていなかったら、今回のこと自体がなく、僕はその間、家で料理をして手を切っていたかもしれない。他のことをしていたかもしれない。

質問をしていないので、レセプションの際に、『君、質問していたね。』と言う風には話しかけられることもなかったはずのことである。


まぁまどろっこしい話は抜きにしても、今回はONを押したことで、僕にとっても、『僕とカン・ジェギュ監督の間』にコミュニケーションが成立しました。
yosuke hosoiとKang Je Gyuの間に確実に何かが流れたのです。
自分で質問することによって、会場全体にではあるが、監督は基本的に僕に向かって丁寧に回答してくれたのだ。
それは大変嬉しいことだ。

思えば、アメリカに来てすぐ、スーパーサイズミーでも有名なモーガン・スパーロック監督の講演会が会ったときも僕はここでいう『ON』という選択肢を取っていた。英語が完璧じゃないとか、そんなのは関係ねー!!

よく言われることだけど、そうやって、人生ってのは瞬間瞬間における『選択』の繰り返しなんだ。最近は得にそれを意識する。これを今したら?あれをこうしたらどうなる?しなかったら?と思うと人生って本当に面白い。
だから岡本太郎の言う瞬間に生きろというメッセージはこの上なく強烈なのだ。

そして僕が映画を作っていきたいと思うのは、一体何故なんだと考えたときに、最終的に出て来た答えは、『みんなの日常に"刺激"を与えたい!』という結論に至ったのだ。つまり、あなたの生活の一部に『変化』を演出したいのだ。
今日という日は、僕の映画を見なかったら、いつも通りの平坦な日だったはずであったのに、そこに凹凸が加わる。
僕はそれがしたい。
『変化』をさせたいとい意味ではカン・ジェギュ監督の考えることと、僕の考えることは共通している。

ただ彼の回答を聞いて僕は嬉しくなったのだ。