アーティストビザ獲得 と Man of the House 最後の上映会

今晩はResoboxというアートギャラリーで "Man of the House" と "Club Fizz" の上映と講演を開かせて頂いた。ただの上映会ではなく、カンヌ映画祭まで辿り着いた過程や経験などをシェアして欲しいということで、持ち時間二時間を英語でいかに楽しく、感動的にできるかここ数週間はそれに集中して来た。既に映画二本とも見てくれてるお客さんも来るということなので、何かこの為に特別なものも用意しようと、今回は僕が日本へ帰った時にiPhoneで記録したかなりパーソナルな僕とおばあちゃんの会話を二本見せることにした。それはほんと何気ない会話で、個人的な会話だけど、そこには祖母の人生の最後の部分から滲み出る愛で溢れていた気がする。とある日本の片田舎で、僕とおばあちゃんという、ある日本人が会話をしている、この二分程の映像に白人も、黒人も、ラテン系も、アジア人も、そして日本人もみんな涙していた。

おばあちゃんがこの世を去ってもうすぐ一年。映写機を通して大きな画面に映し出される祖母の優しい顔、語りかける声。一瞬だけどここに降りて来たような感覚に涙しそうになった。
彼女と絶対接点なんてないようなニューヨークにいるアメリカ人と祖母を会わせられたのが嬉しかったし、不思議な感覚になった。

一つだけ確信できたことがある。

それは、最後の最後まで個人的な経験のレベルにまで掘り下げていくと、人種を越えて感情を共有できるということ。今までやってきたことは間違いなかった。

"Man of the House" はまだ来年ブラジルでの映画祭があるものの行けるかわからないので、"Club Fizz" も含め、事実上今晩が最後の上映となった。脚本の段階から含めるとあれから二年。この映画の集大成を迎えられた気がする。胸がいっぱいになった。

色んなことがあった。色んな壁にぶち当たった。何度諦めようかと思った。
でも振り返ると、この映画は本当にたくさんの人に見てもらえた。僕をたくさんのところに連れて行ってくれた。たくさんの人に会わせてくれた。映画で成功しようともがく仲間と上昇してこれた。そして、夢に見ていたカンヌ映画祭にも行く事ができた。

最後になりますが今週、アーティストビザが無事おりました。
世界を代表できるような映画監督になることを夢見てアメリカに渡って七年を越え、色んなことがありましたが、この延長戦に入れそうです。結果よりも過程が大事だということはよく言われるしわかっているけれど、それでも今年は結果を求めてがむしゃらにやってきたつもりです。ビザを取る為には有名な映画祭に入賞するなど、誰にもわかりやすいはっきりした結果が必要だと判断したから。アメリカ人のクラスメイトと違って、僕の尻には火がついていました。結果を出さなければ、ここを去らなくてはいけない。でもそれが僕を駆り立ててくれました。みんなの何倍も脚本を練って、何倍も映画を届ける努力をしてきたつもりだ。それがこの映画になった。

ビザがおり、卒業制作を見届け、祖母にもやっと別れを告げられた気がした夜。やっぱり胸がいっぱいだ。
これから本当の社会での勝負になってくる。厳しい波に揉まれて、時々道がわからなくなるし、自分には才能がないのじゃないかと何度も諦めそうになってきた。でも今日のみんなの熱い反応と熱気に再び自信を取り戻せた気がする。僕の映画も人の心に届くんだって。

卒業後、照明やカメラなど、技術者としての仕事を多くしてきてたくさん学んだ。でもやっぱり自分は監督としてお話を伝えることが好きなんだって改めて確認できた。

全てここまで支えてくれた人たちのお陰以外の何ものでもない、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。もっとみんなに優しくなろうって心に決めた。もっとみんなのこと気にしようって思った。

これから、より厳しい競争が待っていると思う。今までよりもっと頑張って行くので、これからも応援よろしくお願いします。

細井洋介