オペラ-AidaとHamlet

出会いと別れが非常にめまぐるしいそんな街ニューヨークに、先日妹がやってきた。来ている間、時間の許す限り色々見て回ったのだが、その中でも個人的にぐっと来たものを書き残そうと思うのである。
3/31にVerdiによる「Aida」のオペラのショーををMetropolitan Operaで鑑賞した。当日は売り切れだったのだが、立見でたったの$25で一階席に入れた。しかも第二幕が終わったところで優しい子たちに一階席を譲ってもらえてさらにラッキーだった。

エジプトを舞台に壮大なセットと心の琴線を直接震わせる程の声。
1871年に 初演された全4幕か ら成る。ファラオ時代のエジプトとエチオピア、2つの国に引裂かれた男女の悲恋を描き、今日でも最も人気の高いオペラのひとつだという。
イタリア語なのでパンフレットにあるあらすじをActごとに読み、あとは座席の前に出る英語の字幕をちらっと見ては歌と演技を楽しむ。こういったスタイルで3時間半のショーを一気に見切る。
圧巻。
ストーリーはそこまで入り組まず単純なのだけれど、歌のみで感情を表現し、物語を進行していく、映画や舞台とはまた違った芸術。昔ワーグナーはこれを総合芸術と呼んだっけ。

4年程前に同じくMetropolitan Operaで「フィガロの結婚」を鑑賞したときは正直ここまでは感じなかった。この4年で何が変わったのだろうか。僕の感受性が変わったのか。でもきっと全ては映画というミディアムを通じて物事を考えてる気がする。いかに映画に活かしていけるか。オペラを効果的に使っている映画をいくつか知っている。最近のものではLars von Trier監督のAntichrist. まずプロローグで完全にもっていかれていた。HändelによるLascia ch'io pianga (from his 'Rinaldo' opera)を使用していた。ものすごく力強かった。

NYという土地にいることから幸いにもこういったものにアクセスがある。できるだけ若く、感受性が柔らかい質の間に色々見てそれを豊かにしておくことがきっと今後勝負していく時にキーになっていくのだと思う。

すっかりオペラの魅了された妹と僕は、数日後また気づけばMetropolitan Operaに足を運ぶ。
今度は「Hamlet」
これは僕がNew York Cityの学生証を持っているので二人分まで一枚たったの$25で、普通$100くらいする席を買えてしまうのだ。何とも学生に優しい街だこと。
Hamletは映画も見たことがあるし、先学期、舞台も監督したので脚本もかなり読み込んだ作品である。なのでこれをオペラでどう表現するかすごく気になっていた。
その結論から言うと、だいぶオペラはオペラで脚色していた。まず舞台設定をデンマークの城ではなくNowhere、つまりどこでもないということにしていた。そしてラストの剣の戦いがなかったりと、思ったより全然オリジナルと変わっていた。それでも第四幕、OheliaのMad Scene. つまり、Hamletとの恋が叶わず自殺して楽になるしかないと歌うシーン。もうこれには涙した。鳥肌たった。これにはシーンの途中なのにも関わらずお客さんは拍手喝采、そしてBravo!、スタンディングオベーションだった。その拍手の嵐はラストのカーテンコールよりも長く大きかった。

それにしてもオペラに来る度に思うのだけれど、白髪の老夫婦が多いこと。それも全員白人。全体の9割はそうだと思う。白人の裕福層なのかな。黒人、ヒスパニック系は全く見ないね。あと僕らの世代の人とか。
Chicagoをbroadwayで見た時と同様、今回のオペラは僕の中でかなりビビっとくるものを感じたので、こういう時は必ず今後の映画製作に多大な影響をもたらすサイン。今から楽しみでならない。
会場で会わなかったけど、友達が二人程同じ会場にいたらしい。脚本家のTomとパリからの留学生のNora.何だか通じるものがあるね。そういうのって。
明日はLincoln Centerの図書館でオペラのリサーチに籠って、今月中にあとは、カルメンとトスカを見に行きたい。久しぶりにぐっと何かにはまった。そんな気がする。