[映画] Jim Hallの音。

今日は次の作品の為のロケーションであるアトリエを探しにブルックリンへ。そしてさらに最大の見せ場であるクラブのシーンのロケーションも見に行く。照明器具を選びに行き、それからワードローブのshoheiちゃんとミーティング。もう毎日奔走。

その後は jazz composerのmasa君と念願のJim Hallを見にBird Landへ足を運ぶ。
この箱へは入ったことなかったし、何よりも今までずっと彼のアルバムを聞き込んできて、jazz guitaristの中で一番好きなJim Hallさんを見られるのは本当に光栄なこと。かなり高齢で背中も曲がり杖をつくその彼が奏でる音は、もう長い時間をかけて熟成された、深くて優しい、そんな音がした。本当にそれを聞いていて幸せだった。

「本物」に触れられるチャンスが多いニューヨーク。これだから離れられない。この多感な時期にしっかり感性を磨ける環境にいられるのは、今後しっかりと僕のベースとなって光ってくれるに違いない。

St. Thomasでショーを終えたJim Hallに、素晴らしいショーをありがとうと伝えに行くと、ありがとうと言いサインを頂けた。それは日本語で「平和 Jim Hall」としっかりと僕の手帳に刻まれている。

一ヶ月後には無事撮れて笑っていられるといいのだけれど、いつものごとく今回の壁は高くて到底越えられそうになく思える。この仕事量を学校に行きながらこなすのはどうやったらいいかわからないくらい多い。それは毎日準備をしている段階でも見えてこない。何しろハンドルしなきゃならない人数とロケーションとが多い。果たして撮り終えられるのか。頭が完全にそのことを忘れてリラックスできる時間というのは存在していない。きっと寝ているときも。いつも洋介ならできるから大丈夫だよってみんな言ってくれるのだけれど、その体をコントロールしている僕は見えない壁と不安といつも戦っている。ただしっかり目線は先に据えられているのできっと大丈夫。

いずれにしても一ヶ月後には撮りきれたか、撮りきれないか結果は出ているわけだ。やってもやらなくても時間だけは平等に過ぎ去る。不思議なもの。
幸いにも周りのみんなが様々なカタチでサポートしてくれて、それぞれのタレントをそこに注いでくれる。それを僕はうまく舵取りできさえすればきっと満足いくものができるはずだ。

そこを目指して。
11.11.09
細井洋介


あとがき。
ここ数年しばらくいつもいつも筆をとる度に、頑張らなきゃ、頑張らなきゃ、これができたよ、あれができたよという長たらしい日記ばかり書き続けていて、読んでくれているみんなには、またかよ、的なふうに思えるかもしれないです。ごめんなさいね。ただ書き続けるコンセプトの中には、映画監督になるまでの軌跡を描くリアルタイムドキュメント、つまりこの時期にこういうことをして、この時期にああいうアプローチをして、それがこう失敗して成功して、それがこう繋がってああ繋がってと、そういうものを誰か未来の人、または現在の走り続ける人にヒントを残そうと思って書き続けています。それでは。